みんな一生懸命生きている。
- mata-ne

- 10月29日
- 読了時間: 5分
更新日:15 時間前
スタッフのひなです☺︎
先日富士山へスタッフトレーニングに行きました!
今回は富士登山ではなく、12月に控える富士北麓洞窟トレーニングの下見がメイン。
富士山の三大噴火のひとつとされる『貞観大噴火』を引き起こした山の噴火口も近くにあったので、寄ってみることにしました!
この貞観大噴火は、かつてそこに位置していた湖「せの海」を、今の本栖湖・精進湖・西湖の三つに分断したほど大量の溶岩が流れ出た噴火と言われていて、
またね自然学校で年2回行なっている樹海洞窟探検の舞台にもなっている『青木ヶ原樹海』も形成した、歴史的にもとても大きな噴火だったそう。

地図で自分のいる場所と目的地を照らし合わせながら、いざ出発。
火口に向けて歩き始めた森は、人がなかなか立ち入ることがないであろう場所で、
自然のままにのびのびと生きている動物の気配や植物がたくさん!
紅葉して落ちた葉で地面が黄色く彩られていたり、生い茂る木々の間から差し込む陽の光がキラキラ眩しかったり、見たことのないキノコがあったり。自然は本当にいつも新鮮な驚きと感動を与えてくれます。
そんな中ひっそりと姿を現した噴火口。
こんなに小さな場所からあの青木ヶ原樹海を作り出した溶岩が本当にここから流れ出したのかと驚きを感じつつも火口の真ん中に立ってみると、飲み込まれそうな錯覚を覚えるほど高々と聳え立つ頭上の木々と、足元で必死に命を芽吹かせている小さな草木や苔から、その山の静かな力強さを感じました。

火口を後にして頂上に近づくにつれ、どんどん増えてくる鹿の糞。
カサカサと音がすると思ったらすぐ近くに鹿が数頭で休んでいたであろう寝屋があったりと、人里を離れたその場所は動物の気配を驚くほど近くに感じます。
登頂すると、今度はいよいよメインの洞窟を目指します。
少し方角を変えただけで、これまでとはまたガラリと違う表情を見せてくれる森。
「さっきまで鹿に全部食べられていた笹が、ここだと葉が残っているね」「もしかしたらこっちには熊がいて、鹿はあんまり来ないのかもね」とだいちゃん。
同じ山でも住むものが違えばこんなにも森の姿が変わってくるのかと、驚きの連続です。
ミズナラや白樺、楓など、多様な植物が共存する森を進んでいくと、
目当ての洞窟発見!
そこはかつての大噴火で流れ出た溶岩の通り道で、いくつもの洞窟が連なっています。
12月のトレーニング当日の状況をイメージしながらシミュレーションしようとしていると、
遠くからガサガサと足音が…。
鹿のとは違う、人の足音に似た重さの音。
こんなところにも他の人が来るのかぁ〜と斜面を登って見に行こうとすると…
「熊!!!!!」
ぐるんとひっくり返った視界。
私より先に熊に気がついただいちゃんが、先を歩く私のザックを引っ張ってくれたからでした。
「え?え?鹿?」
全く頭が追いつかず混乱していた私は、状況をたんたんに伝えているだいちゃんの話し声でようやく理解が追いつきました。
さっき目の前に見えた黒いモノは、熊だ。
なんだか分からないけどこれまで感じたことがないほどビリビリ震える体。
すぐ側で「ヴォーーーー」と繰り返し威嚇する熊の声が低く轟いています。
姿が見えないうちはできるだけ声を出しながらこちらの居場所を絶えず知らせ続けること、万が一遭遇してしまって目が合ってしまったら、目を逸らさずに静かに後退していくこと。
命の危険がすぐ近くにあることに、経験したことのないほどの恐怖を感じつつも、
最低限の注意事項を確認し合って洞窟の下見は中断。
徐々に引き返しながら、少しづつ冷静さを取り戻して辺りを見渡してみると、
熊の痕跡がたくさん!
糞が何箇所も落ちていたり、茂みの中に獣道ができていたり、普段からここで暮らしている熊の様子がよく見えてきました。
「あ、本当に今は人間が森にお邪魔している立場なんだ。」
またね自然学校ではよく、『街は人間が暮らすところ、森は動物たちが暮らすところ。だから人間が森にお邪魔しているんだよ』というお話をします。
それが、この瞬間ストンと腑に落ちてきました。
いつの頃からか、人は森を離れ村を築き、街を広げていきました。
気づけば、自然と距離をとることが“安全”だと感じるようになり、中には自然を支配できると錯覚する人さえいます。
かつてはさまざまな動物と共に、森の中で暮らしていたはずのヒト。
でも、熊の存在を近くに感じた瞬間浮かんできた感情は、「敵わない。怖い。どうしたらいいか分からない。」「人間は何てか弱い生き物なんだ。」
いつの間に自然の中で生きる知恵と力を失ってしまったのだろう…
でも、人間だけがか弱いわけではない。
ただみんな自分の身を守り子どもの身を守り、生きることに一生懸命なだけなんだ。
車に着くまでの道中、だいちゃんとたんたん3人で大声を張りながら、枝で作った即席の槍(?)を手に、文字通り一生懸命歩きました。
遂に車に帰還。
熊に対抗して叫びながら帰ったのも、枝で武器を作ったのも、無事だった今だから笑って話せるけど、本当に何事もなく無事でよかった…!!
でも、今回のようなことって自然の近くで暮らしているのならば日常にも当たり前に潜んでいる出来事だと思うのです。
自然の中で生きるって、そういうことなんだ。
だからこそ、「生きている」っていうことをダイレクトに実感することができる。
今では他の動物と積極的に棲み分けをすることがお互いのためだとする考え方もあるようです。
何が私たち生き物たちにとっての幸せなのでしょうか。
いつの日か、人がもう一度自然と呼吸を合わせて生きる時代が戻ってくるのでしょうか。
まだまだ経験も考えも追いつけず答えは持っていないけれど、
「生きている」という実感溢れる今の暮らしの中でキャッチできるものを最大限自分の中に取り込んで、自然の中で生きる力と知恵を少しずつでも蓄えていければいいなと思っています。














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